ポチR様のレビュー
萩尾先生の幻のエッセイが文庫化されるというので早速購入。20代の先生がどんなことを考え、どんな人々と交流していたのかがよくわかる本。この本には萩尾先生のデッサンがたくさん載っている。これだけでもお宝物。買いです。
先生が大変だなあ、と思ったのは、実の姉との会話のエッセイ。「私は相手のために言ったのに、相手は「きつくてぐさっと来た」などと悪く取る。私は悪くないのに。悪く取るのは相手が悪い。」という論調が延々と続くお姉さんの思考。全て自分は正しくて相手が悪い、なのだ。読んでいて第三者なのに激しい怒りがこみ上げてきた。なんと父親も同じ性格だったと言う。これでは萩尾先生も大変だったろう・・・。他人なら付き合いをやめれば済むが、身内はそうはいかない。
そして、編集さんとの攻防。これは当時も今も大変なのだろう。「試練を経て、マンガ家もしたたかになる」、そうだ。
MOTO M2様のレビュー
萩尾望都の文章は非常に魅力的です。
萩尾望都のほんわかしている(であろう)人柄を思いおこさせるような
独特の文が、読んでいてとても心地良いです。
中でも、やはり萩尾漫画のファンとしては、作品に関連しているエッセイ
「名前というもののあれこれ」「作家と編集の間には」「仕事中断の苦しみについて」
あたりに惹かれました。
「キャラクターの名前を考えるとき、よくやるのが連想、転換」
この項目が特におもしろかった。
「私は対人関係の距離をうまくとることができません」という一文から始まる
あとがき「私と他者」も魅力的な内容だった。
イラストも盛りだくさん!(目を奪われるクオリティのものばかり!)
よしもとばななの解説原稿は言うまでもなく素晴らしい。
「萩尾望都は私にとって神であり、創作の親である」と言い切るあたりに
よしもとばななの萩尾望都へのリスペクト魂を感じることができて嬉しかった。
表紙のイラストも申し分なく良い。(これは水彩画?)
赤い服のグラデーションの部分が素敵です。さすがの色使いに見惚れてしまった。
いつも鞄に入れておきたい一冊です。
とうふ様のレビュー
萩尾望都のような巨匠の書いたものが今まで入手困難だったことに驚きました(「唯一のエッセイ集」だそうです)。瑞々しい文章はところどころ時代を感じさせる(?)言い回しや言葉遣いを含んではいますが、それもまた味があり、ファンとして「こんなことを考えていたんだな」と感慨深いところです。
漫画家ならではの話題として、当時の(主に編集者との)丁々発止の掛け合いや、青池保子ら同じ少女漫画家たちとの交流などが実にいきいきと描写されています。たとえば『トーマの心臓』は実は読者アンケートの数字が悪く、ずっと打ち切り寸前だった、というのは割と有名な話ですが、それを改めて萩尾望都自身の言葉で読むというのは興味深いのと同時にユーモラスな楽しさがあります。
漫画の他にもミステリやダンス、映画など様々な刺激を受ける中、自分なりの言葉でその経験を語ったり、なんでもないような思い出を愛嬌を込めて書いてみたりと、分量としてはさほど多くないにも関わらず実に多様な話題が目白押し。挿絵と呼ぶにはあまりにも魅力的なイラストが多めに収録されている点も大満足でした(もちろん絵柄は当時のもの)。