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1999-09
No Image
 価 格 ¥ 600
 著 者 谷口 ジロー
ランキング663004動物、あるいは動物と人間というテーマは、谷口ジローにとって大事なものである。短篇を中心として作品も多いが、本作はこのテーマを描いたものとしては代表作の一つといえる傑作である。

ストーリーも良いが、やはり、この作品の魅力は谷口ジローの圧倒的な画力で描かれる『ブランカ』である。その動き。その表情。その仕草。全ての描写が完璧である。唸るしかない。

著者の作品に「餓狼伝」というプロレスラーと空手家の闘いを描いた作品がある。その“単行本”のあとがきで原作者の夢枕獏が『谷口さんは、プロボクサー、アマレスラー、プロレスラーの肉体の違いをはっきり描き分けられる稀有な作家である』と記しているのだが、谷口ジローは『人間ばかりではなく犬の肉体と表情の違いをはっきりと描きわけられる作家』でもある。それは、著者の飼っていた犬が老衰で徐々に弱って死んでゆく様子を描いた「犬を飼う」という作品との比較でも知ることが出来る。

この作品は85年に祥伝社から発売された単行本が底本であり、96年に本作の続編「神の犬」が連載されたのをきっかけに、小学館から再版された単行本(コミックサイズ)を文庫化したものである。文庫本は気軽に読めてよいのだが、谷口ジローの絵は単行本で味わうべきだと思う。単行本での再版を望む!!
1999-08-01
 価 格 ¥ 1,680
 著 者 夏目 房之介
ランキング438696
1999-06
No Image
 価 格 ¥ 1,050
 著 者 谷口 ジロー
ランキング650356 ’79年から’85年に発表された短篇6編が収められた作品集。’94年に河出書房新社から発売されたものの新装版である。初出は週刊漫画アクション等であるが既になくなった雑誌もある。6編全て原作なしのオリジナル作となっている。
 題材は動物あるいは自然と人間である。そういった意味では現在の彼の作品の原型とも言えるかもしれない。しかし、近年の静謐ともいえる作品とはちょっと異なる。この時期の彼は所謂劇画作家である。当然、絵も劇画的であり線も太い。取り上げた題材も近未来の動物保護区で、ある理由から幻の動物を追うことになった男女の話や1870年代アメリカへ流れ着きインディアンと生活を共にする日本人の話など劇画(ハードボイルド)的なものが多い。
 だから、近年の彼の作品とは別物と思った方がいいかもしれない。昔と現在の違いを比べてみるにはいい作品集であるが、ちょっとマニア向けかもしれない、ということで☆は3つ。でもいい作品集だと思う。
1999-02
 価 格 ¥ 840
 著 者 谷口 ジロー
ランキング初出はビックコミック。全2巻の作品。‘04年に1冊にまとめたものが再版されている。原作はなく著者のオリジナル作である。

都会に住む48歳の男がタイムスリップして14歳の頃に戻ってしまう。記憶はそのままである。つまり48年の人生を経験した14歳である。人生をやり直しているようなものだ。身体も軽いし、勉強、友人、全てが新鮮である。

男の父は、家庭は円満だったにもかかわらず、彼が14歳のとき、誰にも何も告げずに家を出てしまっている。彼はその理由をいまだに知らない。タイムスリップした彼は、父が家を去る時になんとか引き止めようと説得するのだが、父の気持ちが理解できたと同時に自分の気持ちにも気付いてしまった“48歳”の彼は止めることが出来ない。結局、何も変えることが出来ないまま彼は記憶を取り戻し、もとの生活に戻る。そして、ある日、家に届いた小包を開けると…。

ストーリーとしては目新しいものではないし、小説だとしたら力量がある作家でないと駄作になりそうである。しかし、これが谷口ジローの絵(人物だけではなく背景もふくめた絵である)で描かれると素晴らしい作品となる。大人のマンガである。原作なしのオリジナルとしては代表作の一つに数えられるだろう。

谷口ジローは欧米での評価が高い。この作品もヨーロッパでいくつかの賞を受賞している。詳しくはわからないのだが、ストーリーを重視する傾向にある日本の漫画に対し、欧米では絵を重視して、絵自体で何かを表現する作品が多いようだ。90年代以降の著者のオリジナル作は殆どが地味である。しかし、「絵だけで物語を表現」できる彼の評価が高いのは当然なのかもしれない。
1999-01
 価 格 ¥ 1,200
 著 者 谷口 ジロー
ランキング’84年から95年に発表され単行本未収録となっていた短篇7作品をまとめたものであるが、殆どが86年迄の作品である。内容はSF、スポーツ(自転車)、ハードボイルド的なもの、心象スケッチ風のものと様々であるが、原作つきは関川夏央の1作のみである。

著者はあとがきで、これらの作品はその当時興味を持っていた題材あるいは表現方法を試し、自分なりの表現方法を見つけ出そうとしていた時期のものであったと記している。そういった意味では習作的な作品が多いのかもしれないが、作風や絵の変化など現在の著者を知る上でも貴重な作品集である。

私は彼の長年のファンである。だから、ここに収録されている短篇がその後どの作品に影響を与えたかを大体理解できたので楽しむことはできた。でも、最初に手に取る著者の作品としてはどうかなとは思う。チョットマニア向けかもしれない…、ということで☆は3つ。なお、’04年に講談社から文庫版が発売されている。
 
 価 格 ¥ 450
ランキング113387‘93年に単行本として発売された作品を文庫化したもの。原作は内海隆一郎(小説家)の「人々シリーズ」と呼ばれる短篇小説集から選ばれた8作品である。

主人公は老若男女様々であるが、母親のわがままによって彼女の実家に預けられることになってしまった幼い娘、息子夫婦の家を飛び出してしまった兄、といずれもチョット訳ありの人物である。描かれているのは、これらの人物の日常に起こるこれもチョットした事件であるのだが、そこには、彼らの繊細な心の動きが描かれている。谷口ジローのオリジナル作と言われれば信じてしまいそうである。

この頃から、彼の作品は、現在のように繊細な線で背景の中に人物が溶け込んでいるような絵で描かれるようになる。この作品はそんな画風にぴったりの作品である。

原作者によるとこの短編集のマンガ家を持ちかけたのは谷口ジローだそうであり、200編あまり書かれていたこのシリーズから8編を選んだのも彼だったそうだ。谷口ジローは原作者の作品の中に自分のオリジナル作と何か通じるものを感じていたのだろう。

この作品の出来は、これも原作者のあとがきにある「できあがった作品すべてが、わたしのなかにあるものと寸分ちがわないのである。これは原作者冥利というほかない」という言葉が全てを表している。地味だがしみじみといい作品集である。

近年、著者の作品が少しずつではあるが文庫で再版されている。文庫は気軽に読めていいのだが、やはり彼の作品は単行本で読む方がいい。
1998-09
 価 格 ¥ 660
ランキング767120‘82年に単行本として初版が発売された作品を文庫化したもの。原作は狩撫麻礼。初出は平凡パンチ、懐かしい雑誌である。

そのライブが、一部で熱狂的な人気を誇っていたオデッセイバンド。今でいうインディーズバンドである(もっとも現在のインディーズは本来の姿を失っているのだが)。レパートリーは黒人のブルースとボブ・マーレイ、狩撫麻礼の世界である。主人公はフロントマンのオデッセイ、年齢は30歳チョット前か。日本人である。そのボーカルスタイルから“黒いボーカリスト”と呼ばれる男である。

この作品を一言で説明すると、オデッセイがある辣腕プロデューサーに見出されメジャーの階段をのぼり、最後は社会現象にもなる物語であるのだが、当然単純なサクセスストーリーではなく、エンディングにも一ひねりある。しかし、個人的にはいい作品とは言い難い。

一つは、本筋のストーリーより、作品の半分近くを占める、オデッセイの日常とはいいがたい日常を描いたサイドストーリーの方が面白く、谷口ジローの絵も生き生きとしている、ということ。

もう一つは谷口ジローの絵である。狩撫麻礼原作のマンガは、音楽を扱ったものでなくとも、登場人物の生き様にそれを重ね合わせるものが多い。好きな人にはたまらないのだろうが、そうでない人にはそれが鼻につく。私は後者である。この作品はミュージシャンを描いたものなので、そういったことはないのだが、谷口ジローの絵の出来が良くない。LIVEのシーンに汗は感じられるものの音が感じられない。間違いなく、彼は多くの資料を参考にしなんとか臨場感を出そうとしたはずである。実際、オデッセイがミックジャガーに見えるコマもある。しかし、絵がどうしても硬い。

谷口ジローの長年のファンである私にとって、あまり評価できる作品ではないが、彼が表現するのが難しいミュージシャンを描いた貴重な作品だとは思う。
 価 格 ¥ 630
ランキング979284‘82年に単行本として初版が発売された作品を文庫化したもの。原作は狩撫麻礼。初出は平凡パンチ、懐かしい雑誌である。


そのライブが、一部で熱狂的な人気を誇っていたオデッセイバンド。今でいうインディーズバンドである(もっとも現在のインディーズは本来の姿を失っているのだが)。レパートリーは黒人のブルースとボブ・マーレイ、狩撫麻礼の世界である。主人公はフロントマンのオデッセイ、年齢は30歳チョット前か。日本人である。そのボーカルスタイルから“黒いボーカリスト”と呼ばれる男である。

この作品を一言で説明すると、オデッセイがある辣腕プロデューサーに見出されメジャーの階段をのぼり、最後は社会現象にもなる物語であるのだが、当然単純なサクセスストーリーではなく、エンディングにも一ひねりある。しかし、個人的にはいい作品とは言い難い。

一つは、本筋のストーリーより、作品の半分近くを占める、オデッセイの日常とはいいがたい日常を描いたサイドストーリーの方が面白く、谷口ジローの絵も生き生きとしている、ということ。

もう一つは谷口ジローの絵である。狩撫麻礼原作のマンガは、音楽を扱ったものでなくとも、登場人物の生き様にそれを重ね合わせるものが多い。好きな人にはたまらないのだろうが、そうでない人にはそれが鼻につく。私は後者である。この作品はミュージシャンを描いたものなので、そういったことはないのだが、谷口ジローの絵の出来が良くない。LIVEのシーンに汗は感じられるものの音が感じられない。間違いなく、彼は多くの資料を参考にしなんとか臨場感を出そうとしたはずである。実際、オデッセイがミックジャガーに見えるコマもある。しかし、絵がどうしても硬い。
 価 格 ¥ 450
 著 者 谷口 ジロー
ランキング412383‘92年に講談社から発売されたものを文庫化した作品。原作はなく谷口ジローのオリジナル作品である。1話完結方式の全17話。

郊外の借家に妻と引っ越してきた主人公。年齢は40歳くらいで職業はサラリーマンか。子供はいない。主人公はこの町を歩く。空き地では飛行機を飛ばす子供たちを眺めたり、犬を散歩させたり、図書館に行ったり、深夜仕事帰りに酔っ払ったままビルの屋上に上がったり、公園に行ったりといろいろな所へ歩いていく。そして、そこで起きたちょっとした出来事が描かれるのだが、どの作品にも家並みとともに必ずと言っていいほど木々や川、雪や雨の自然が描かれている。それも主人公の歩く速度にあわせてゆったりと描かれている。そう感じられるのは必要最小限のスクリーントーンやベタ(黒)しか使わず柔らかい線で白っぽい風景を描き出しているからであろう。そして、この作品にはセリフも擬音も殆どないのだが、人物の動きや表情あるいは背景だけで全てが表現され尽くされている。これができるマンガ家はチョット他にはいない。
盛り上がりも特になく非常に地味で寡黙な作品なのだがとても味わいのある作品である。

’06年3月に久住昌之原作・谷口ジロー作画の「散歩もの」という作品が発売されている。この作品も一人の男が日常立ち寄った場所をスケッチした短篇集であり、エッセイというよりも日本語の随筆と言う言葉がぴったりな大人のマンガであるのだが、男のセリフは多めである。そして中心となる風景は都会であり絵も本作よりはシャープである。主人公はその場所を訪れる男といえるかもしれない。この「歩くひと」における主人公はあくまで自然であろう。男はその案内人と言えるのかもしれない。両方の作品を読んで違いを比べて欲しい。
 価 格 ¥ 840
 著 者 谷口 ジロー
ランキング これは おおきな 創作者による 渾身の作品と思った。
 若者には 理解困難かもしれない。年寄りには 夢と希望と哀愁をあたえてくれる作品。
 かって このような 作品にはであったことはない。
 この作品は 谷口ジローが 自分で構想し 創り上げた奇跡の作品である。
 48歳の主人公は 突如 『時をかける少年』となる。
 中学生に戻ったのだ。
 しかも、48歳生きてきた経験をもっったまま。
 場所は鳥取県倉吉市。この町で 彼は少年時代生きていたのだ。祖母、母、父、妹。

 少年は 身体が軽くなる。走ることに苦痛なし。
クラスの 皆のあこがれのまと 賢く美しい少女と つながり、お互いを愛し合う。このあたり、おませで勇気がないとできない行動だ。周りも認めてゆく。
 ぼくは この少女を愛する。これほど美しく賢い少女を見たことがない。
 彼女の姿は 下巻の第5章「夏の風景」の巻頭の絵を みてほしい。
 すばらしい。

 さらに 個性あふれるおませな友人達。
 こんなこと あの時代に この倉吉市では 実際にあったのだろうか。
=======
 父は黙々と仕事をし家族のことを配慮している。その父が 失踪する!それをとめようとする少年。しかし不可能であった。
 父の失踪を ゆるす 豊かな母。そして 母の死。

 全てが 優しいのである。
《自分に 真剣に生き、人の生き方を 大事に大事にしている。》
 こんな夢のような世界が 倉吉市にあったのだろうか。
 最後のあっと驚く結末。父の姿が見える。錯覚か。

『父の暦』とくらべ この作品は ぼくたちを 仰天させ、翻弄させてくれる。 この翻弄こそ ぼくたちが望んでいたこと・夢物語。
 谷口ジローは そんな世界を 仮想であろうと 具体的に創作してくれた。
 この 作品をみたら 自らの 人生を 思い切り 振り返ること可能となる。
 すばらしい 夢。
 ありがたい。やはり 谷口ジローは天才である。
関連サイト
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